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第1部 一章【財前姉妹】その12 第十七番話 先頭は押し付けろ

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-07-23 10:00:00

168.

第十七話 先頭は押し付けろ

 左田純子のダブリーを受けてマナミは腹を括る。

(どうせダブリーなんて考えても分からないんだ。自己中心的に切っていくしかない!)

 打中! ピンフになりそうな配牌なので役牌は要らないという判断だ。しかし、それに合わせてユウも河野も中を切る。

(うっわ! 最悪。2人とも中を持っていたなんて。これじゃ2人を助けただけになっちゃったじゃない!)

左田ツモ北

打北

(北なんて持ってないっての! 持ってりゃそれから切ってたわ。また私が開拓しなきゃいけないの?)

 と思って白に手をかけたが、ふと思い直した。

(いやまてよ。私の手では使わないっぽい数牌を捨てたらいいんじゃないの? みんな切りたい字牌なんかを率先して切ってやる必要ないのよ! そうかそうか。これは良いことを思い付いた)

 マナミの気付きは正解だった。安牌が分からないリーチに対して対応する方法は字牌を切らず自分の手では不用な数牌に手をかけるのが正解。そうすることで他の誰かに字牌を先に試させる事が出来る。しんがりになる必要はない。先頭の係は押し付けてしまえばいいのだ。

 しかし。

マナミ切り番

打⑧

「ロン」

左田手牌

一二三六七八⑦⑨⑨⑨456 ⑧ロン ドラ1

「2600」

「はい…」(あ、やっぱり字牌から切れば良かったわ。やらかした)

《マナミの⑧切りは良い考えでしたけどね》

(そうなの?)

「私なら一発放銃だからマナミは耐えた方ね」と守備派のミ

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